掲示板でちょっとしたプチ企画v
テーマを決めてスレヒナを描き書きしまくろう企画


第3回目の今回のお題は

『雪』


参加してくださった島斗様、AYA様、綜柳様、櫻雪花様、千里様、
素敵な作品をありがとうございましたvv
おかげ様でかなり癒されますっ!

島斗様 絵、小説 ヒナタ、ナルト、シカマル
AYA様 ヒナタ単体絵
綜柳様 小説 ヒナタ、シカマル
櫻雪花様 小説 ヒナタ、ハナビ
空空汐 小説 ヒナタ、テマリ
千里様 絵、小説 ヒナタ、シカマル




作品展示場。





























>>島斗様


シロイセカイ


「おー、ゆきだってばよ!!雪!!!」

「うっせー、ナル。んな、はしゃぐこともねぇだろうが」

「いいじゃねぇかよシカ、雪なんかあんまふんねぇだからよー」


暗殺任務が終わり、木の葉へと帰っている途中で雪が降ってきた。久々に雪が降っているのを見て、ナルトが帰る前に寄り道をしようと言い出し、今の現状に至る。

「・・・・・・・」
楽しそうにしている二人をヒナタは何も言うこともなく、ただ降ってくる雪を見つめていた。

「・・・どうした、ヒナ?」
いつもなら、一緒にはしゃぐヒナタが、黙り込んでいるのに気づいて、質問を投げかけた。


「・・別になんともないよ、シカ君。ただ、ちょっとこの天気は好きじゃないだけ・・・」
シカマルの方を見ず、空を見上げたまま答えた。

「へー、そうなんだヒナ。でも俺は好きだってばよ。冷たくてかき氷みたくね?」
にししと笑い、あーんと雪を食べる真似をした。
「それは、ナル君らしくていいね」
クス、と寂しげに笑うとその顔を暗くした。

「ヒナ・・「ごめん、シカ君、ナル君、さきに戻るね」
シカマルに言われる前にヒナタはその場から去っていった。





「・・・雪は  嫌い・・・。」
ヒナタは木の葉へと戻る道を、さくさくと足跡をつけていく。

暗い空から限りなく降ってくる雪は、足跡を消していく。

白い雪は、敵の返り血で赤く染まったヒナタをシロに染めていく。

シロイシロイ雪はセカイをシロ一色に変えていく。


「・・・・白は嫌い」

この世は白いものなんてありはしないのに。


ここにいる証を奪い取って。

自分が穢れていることを気づかせて。

全てを真っ白に染め上げて。


「だから、嫌い。」
ぽつりと、苦しげに、切なげにつぶやいてヒナタは火影へと報告するためにその場から飛び去った。

《終焉》




こんばんは、お久しぶりです。空空汐様。
島斗です。

某サイト様のエチャログでは、お世話になりました!凄く濃密な時間をすごすことが出来ましたvV色塗り交換も空空汐様に塗ってもらえて凄く嬉しかったですvv

今回、雪がテーマということなので、またもや暗いスレヒナを描かせていただきました・・・。いたいたですね・・・;;私的設定はナルト、シカマル、ヒナタの三人が暗部で組んでます。仲良しこよしですよvv・・なんていう設定があります。
今、SHINOBIを見ながら描いていますが、凄く切ないです・・・。戦うことが自分の存在意義、戦うことことしか出来ない、どれが忍。仲間さんとオダギリさんの恋路もどうなることなら。どきどきです・・・!

いろいろ書きましたがこの辺で。テーマに沿えたか不安ですが、描いていて楽しかったですvVそれでは失礼します。



 
















>>AYA様

雪が降る

赤も青も緑も黒も全て覆い尽くしてしまえばいい

私の白い瞳もその白で隠してください




企画に参加させてください!

私的にヒナタと言えば雪のイメージがありましてvのりのりで描かせていただきましたv(笑

スレヒナだと雪が好きだったり嫌いだったり色んな話が作れるな〜とか思いつつ・・

・・血の表現は大丈夫でしたでしょうか?


それでは失礼します。

これからも管理、運営等頑張ってください。



 















>>綜柳様



しんしん降る雪は、風に流れて遠くへ行く。
私も、どこか遠くへ行けないのだろうか……。


    雪の行方


「見てるの、そこで。」
「一応…修行ですから。」

新人の暗部が側にいる。火影から命じられた見学、だそうだ。
まわりは白色の世界。銀世界と言う言葉は似合わない気がしてならない。
それにこれから、この世界は赤く染まるのだから、あまり関係はなかった。

「まあ…この金縛りはあなたのおかげだし、感謝するわ。」
「どうも。あなたにお褒めいただいて光栄に思います。」
「お世辞は結構よ。」
「あなた相手にお世辞が通用しないこと…分かりますから。」

そうと言い、彼から目を離す。彼はそこから動かない。これは私の命令だから。
金縛りを掛けてくれたのは、きっと気遣いだろう。私がやりやすいようにと。
今まで見学で来た連中の気遣いよりかは、とてもマシだった。

静かに雪が降る中。断末魔の声が響く。死に逝くを者を、雪が見届ける。
なんと素敵な情景だろう。それをつくっている私が言うことではないかもしれないけれど。

最後の一人の命の灯火が消える。ちょうどその時だった。
ふわっと風が吹いた。降り続ける雪が風に煽られ、舞う。それがなんとも幻想的に感じた。
白かった世界が赤に染まり、白い雪はそこから逃げるように舞う。
風が助けてくれるように。

「……綺麗ですね。」
「そうね。」
「あなたの方が綺麗ですけれどね。」
「お世辞は通用しないんじゃなかったの?」
「分かってますよ。これは私の本心ですから。」

そうしてにやりと、不敵な笑みを浮かべた。
彼は面をつけていない。その姿は、まるで誰かにそっくりだ。

「雪。」
「はい?」
「気にしないの?あなたにずいぶんかぶってるけれど。」
「あなたは、気にしないんですか?」
「好きよ、雪は。」

そう言って空を見上げる。眼に雪が当たる、その冷たさに一瞬眼を閉じる。
けれど、すぐに眼を開ける。私も面はつけていない。
雪の季節くらい、面をつけずに任務をしたかった。
彼と視線を合わせる。彼は、そこから一歩も動いていない。

「好きなんですか、雪が。」
「ええ。産まれた時に降ってたから。」
「そうなんですか?」
「変に意識があったみたい。見覚えがあるのよ。」

雪は風に煽られ、横に降る。彼の居る所から風で舞って来た雪を、手の平で受け止める。

「雪は、どこまで行くのかしら…。」
「どこ…とは?」
「言葉のままだけど。」
「……」

彼は一瞬考えるような仕草を見せる。その仕草も、誰かに似ている。

「少なくとも、火の国の国境を越え、他国にまで届くのではないでしょうか?」
「雪が?」
「ええ。」
「……なら、私もどこか遠くに行きたいものね。」
「?」

彼が不思議そうな顔をした。無理もないかもしれない。
私は休みもせず、文句も言わない暗部として有名だから。

「あなたが…そんなことを言うのですか?」
「私にだって、行きたいところはありますよ。」
「それならば、行きましょうよ。」
「え?」

彼はにこりと笑った。それを見て、私は思い出した。彼は…。

「行きましょう。報告はもう少し後でも大丈夫でしょう?」

雪が舞う。風に煽られ、赤い世界をまた、白く染めていく。
彼が手を差し出し、私を待つ。
上司は自分なのに、部下である彼のその行動に逆らえそうにもない。

「……そうね、行きましょうか。」

報告のサボりなんて、初めてかもしれない。
雪が舞っている今日だけ、許してもらえるだろうか。
彼の差し出した手をとる。私たちは笑い合う。
彼を一番の部下にしよう。彼が暗部として活動するようになったら、引き入れよう。

赤い世界を去り、白い世界に足を踏み入れよう。
そこでしばらく浸ってよう。
産まれた時に見たのと、同じ雪をずっと見ていよう。
彼と共に。



              




どうもこんにちは。綜柳です。
三回目の企画が始まる時期がテストと被ってしまい、しばらく傍観してました。
しかし、やっと復活できまして、早速書き込みました。
雪が風に煽られる様子を表してみたかったのですが、うまくできていなくてすみません。
名前は出してませんが、見学してる暗部は、シカマルです。

企画、ありがとうございます。    綜柳



 
















>>櫻雪花様



すっかり雪化粧した山の中をヒナタはひとり歩いていた。
朝起きると珍しく雪が積もっており、そのままふらりと裏山に入ってしまったのだ。
寝起き姿に着物をひとつ掛けただけのため、寒さが身に凍みる。
だが、不思議と部屋に戻る気にはなれない。
いつもなら聞こえてくる木々のざわめきや鳥の囀りが全く聞こえてこない無音の世界。
雪は音を響きにくくするというが、これほどまで静かになるのだろうか。

「世界にひとり残されたみたい…」

何の音も聞こえない。何の生命も感じとることができない。
まるで死の世界に迷い込んだようだ。
今まで忍として幾度も死線を乗り越えてきた。その度に、ここは地獄だとか死の世界だと思ったものだが、
今目の前の広がる世界こそ死の世界なのだと思い直した。
死した後自分が行くのは地獄だと、天国などでは決してないとよく言うものだが、きっと死した者に待つのは無。
例外なく無になるのだとヒナタは思っている。
意識もなくただ真っ白な世界で眠り続ける。きっとそれは穏やかで安らかなものなのだろう。
殺した人間が出てくることも血に濡れた自分に悲鳴を上げることもない。

ヒナタは天に手を差し伸べた。

ひらひらと雪が舞い落ちてくる。それはまるで桜の花びらを思わせる。
地上の汚れなど全く知らぬ綺麗な雪。美しい結晶が連なって白になる雪。どこまでも汚れを知らぬ雪。
そんな雪にどうしようもなく惹かれてしまう自分。
…自分が綺麗では、真っ白では、清らかではないからだろうか。

「ふふ…」

自然と笑みが零れる。
人は悲しいものだ。自分が決してなれないもの、得ることができないものにばかり惹かれる。
たとえば、今目の前に降る掴めそうで掴めない雪。お前などには触らせないのだと、すぐに水となり溶けてしまう。
…そして、あの向日葵を思わせる金色の男の子。自分があの境遇であるなら、まず間違いなく世界を呪い恨み、絶望していた。
事実私は日向に絶望し、すべての責を妹に押しつけ、ただ逃げた。私は臆病者で卑怯者だ。
ひとり真っ暗闇の中に取り残され、それでも道を見つけ歩んでいく彼と、そこから動くことすらできない私。
そんな自分が嫌だと、変わりたいと思うのに、結局何もできない。

もしこのまま雪の包まれて死んだら…。

ふとそんな考えが浮かぶ。今ここで死ねば、きっと楽になれる。
何も感じず思わず、ただ安らかな眠りにつける。それはきっと幸せで、でも、寂しいことで…。
ヒナタはそこまで考え、思わず自嘲する。
いまだに自分は世界に未練があるのだ。全てを捨て去り、木ノ葉隠れの一葉としてただ力をふるう毎日。
そこに「日向ヒナタ」はいない。ただの忍がひとりいるだけだ。それにも関わらず、私はいまだに人であることにこだわっている。
未練がある。いつか自分を変えてくれるような人に出会えるのではないか、手を引いて真っ暗闇の中を友に歩いてくれる人が
いるんじゃないかとつい思ってしまう。
人であることを捨て、ただの忍となれば、死ぬことよりは辛いけれど、人であり続けるよりはずっと楽になれるのに。

ヒナタは再び天に手を差し伸べる。





「姉上!!」

その声は静寂に包まれた中でよく響いた。
ふと後ろを振り返ると、妹のハナビが駆けてきている。吐く息が白い。
こんな朝早くにこんなところにいるなんてどうしたのだろう。
この裏山はハナビの修行コースには入っていないはず、と思ったところで、ハナビが抱きしめているものに気付く。

「姉上!お部屋に伺ったらお姿が見当たらなくて…もしや外へと思って追いかけて参りました。
…それからこれをお召し下さい。お風邪でも引いたら…」

ハナビは心配そうな顔をして、抱きしめていた綿入りの上着をヒナタに差し出す。
その息は荒く、おそらくここまで走ってきたのだろう。ヒナタはハナビが差し出した上着を受け取り、身につける。
そして、冷え切っているだろうハナビの頬に触れようとして手が止まる。
血に汚れた自分がハナビに触っても良いのだろうか。この汚れがハナビに移ってしまうのではないだろうか。
ハナビは綺麗でいなければならないのに。
…いずれ日向の闇を知るときがやってきたとしても、この真っ直ぐな気高い子はきっとそれに打ち勝つ。
闇を照らす光となるだろう。そう、闇夜に咲く花火のように。

「姉上?」

ハナビは急にフッと笑ったヒナタを不思議そうに見詰める。
そんなハナビを見て、ヒナタは今度は先ほどの自嘲めいた笑みではなく、いつも浮かべている周りからは「優しく暖かい」と
評される笑みを浮かべる。そして、触れようとした手を引っ込めると、

「すっかり冷えてしまったわね。帰りましょうか?」

と言う。ハナビはそれに「はい!」と返事をすると、元来た道のほうに振り返る。
そんなハナビの背中を見ながら、ヒナタは思う。
この愛しい妹がいる限り、私は人であることを止められないのだと。忍になりきること、ただの駒になりきることができないのだと。
真っ暗闇の中で動くことすらできない自分だけれど、この妹のために力をふるうことはできる。
妹を害する者、妹に仇なす者、妹を傷つけようとする者は全て自分がその命を刈り取る。それしかできないから。
私は妹のためにこの世界で生きるのだ。…綺麗な綺麗な私が触れてはならない妹のために…。
ヒナタはフッとまた自嘲めいた笑みを浮かべたその瞬間、

「姉上!!」

ハナビの手が冷え切ったヒナタの手を包み込む。
物思いに耽り、ハナビの行動を全く予想していなかったヒナタは思わず驚きに身を固くする。
そんなヒナタの様子など気付いているのか気付いていないのか、ハナビはすっかり冷え切り、まるで氷のようになったヒナタの
手を自分の小さな手で包み込んでさすったり、息を吹きかけて暖めようとする。
その必死な様子に思わず止めることもできずにただ見ているヒナタ。だが、ふと我に返り、ハナビの手を振り払う。

「あっ…」
「あ、ごめんなさい、ハナビ。…あなたまで冷えてしまうから」

傷ついたようなハナビの声にヒナタは宥めるように言う。
とりあえず傷ついたような表情は消えたハナビだったが、今度は唇を噛みしめ、悔しそうな表情をする。
それを見てヒナタはなぜハナビがそんな表情をするのかまるで分からない。
なぜ悔しそうな表情をするのか、不思議そうに見詰めていると、ハナビがヒナタの瞳を真っ正面から見据えて、

「ハナビは…、ハナビはまだ幼く、頼りないと思います…!
でも、姉上の手を暖めることぐらいはできますから…それぐらいはできますから…!!」

そう言うと縋るような瞳を向ける。
その瞳はいつもの綺麗で汚れを知らない純白。嘘偽りがそこに含まれていないことは一目瞭然だ。
ハナビが自分のことを好いてくれている、慕ってくれていることは以前から感じていた。思っていた。知っていた。
だが、まさか自分を支えようとしてくれていたなんて…。
妹はただ前を向いて歩いていくのだと思っていた。彼のように自分で道を切り開くことができる人間だから。
真っ暗闇の中でただ立ち止まり、前にも後ろにもいけない私とは違う、そう思っていたのに。

妹は前に進むだけではなく、後ろを振り返り、私のほうを見ていてくれた。
それどころか、手を差し伸べてくれた。

思わず涙が滲んでくるのを感じる。何年ぶりだろうか。嬉しくて涙を流すのは。
辛さに耐えかねて泣いたことはある。世界の不合理に泣いたことはある。
…でも、嬉しくて泣いた、しかも、こんなにも嬉しくて泣いたことなど、今までの人生であっただろうか。
ヒナタは無意識のうちにハナビに手を伸ばしていた。…そして、

「あ、姉上…!?」
「…ありがとう、ハナビ。ありがとう、ありがとう…」

ただそう繰り返す。何度も何度もありがとうと伝える。
最初は戸惑っていたハナビだったが、すぐにヒナタの腰に手を回し、抱きしめ返す。その温もりに更に愛おしさを感じながら、
ヒナタはもっと力を込めてハナビを抱きしめる。初めてかもしれない。妹をこうやって抱きしめたのは。
小さいと思っていた身体は予想していたより大きくて、弱いと思っていた力は予想していたより強くて、…初めて知る妹にまた涙が溢れる。
そして、この愛おしい妹を絶対守るのだと誓う。しかも、これからはただ真っ暗闇の中で絶望し、そこに止まるのではなく、
手を差し伸べてくれたハナビの追いつけるように、前に向かって歩いていく努力をしよう。たとえ転んだとしても、きっとこの妹が
気付いて助けに来てくれる。何度も、何度も、この弱い姉を助けに来てくれる。


いつの間にか、雪は止んでいた。
そして、その代わりに天からは暖かい陽光が降り注いでいた。




汐さん、こんばんは!ご無沙汰しております、櫻雪花です。
何とか念願叶って企画参加できました!
「雪=ヒナタ」ぐらいの勢いの人なので、いろいろ書きたいテーマがあり迷ったのですが、結局ちょっとシリアスな内容に
なってしまいました。ヒナタもハナビもお互いのことが好きだけど、ちょっとすれ違ってる感じを書きたいなぁ〜と。

今回も素敵な作品が投稿されており、スレヒナスキーとしては嬉々として拝見しております。
季節ごとにこういう風に皆さまの作品が拝見できるのは本当に楽しく毎回楽しみにしています。
管理等は大変でしょうが、これからも企画楽しみにしておりますv

それではありがとうございました!

 














>>空空汐



 暗い、暗い、闇の中、ひっそりと立つ少女。少女の髪も、目も、肌も、雪のように白く、まるで彼女に対してだけ雪が降ったかのよう。それとも、彼女自身が雪の化身とでも言うのか。その白い瞳はまるでガラス玉のようにうつろで、あまりにも現実離れしていたが、己は生きているのだと主張するかのように瞬いた。小さく首を傾げると、真っ白な髪がさらさらと揺れる。
 幻想的、とも言えるその空間に、一人の男が飛び込む。少女が首を傾げたのと、まったく同時の出来事だった。
 男は何かを恐れるように、何度も何度も振り返りながら、必死になって、暗闇の中、木々をかきわける。目の前にいる、少女の存在には気付かない。だから少女はくすりと笑って、男に向かって腕を上げた。始めから組んでいた術の構成を、完成させるために。少女が腕を上げた事によって、小さな音が生じ、光が、男と、少女とを囲んだ。そこで、ようやっと男は少女に気付く。

「―――ひっっ」

 暗闇の中、ぼう、と白く浮かび上がる少女の姿に、男は仰天して尻餅をついた。その状態で、無様に足を動かし、後ろへずり下がる。
 少女は男の前でしゃがみこみ、視線を合わせてにっこりと笑う。整った顔が織り成す微笑はとてもかわいらしく、美しい物だったが、男は全身の震えを止めることが出来ない。ただの子供と思うには、あまりにも不可解で、不気味な存在だった。

「こんにちは。オウジサマ」
「…なっ、何が、何が望みだっっ!! 金か!? 地位か!? 余を…」
「いらないよそんなもの。もう、持ってるしね。欲しいのはただ一つだけ」

 20代も過ぎたような男が、小さな子供に向かって必死に言い募るのはひどく滑稽で見苦しい光景だったが、少女の表情は全く変わらなかった。つまり、にっこりと笑ったまま。

「なっ、何…っっ」
「貴方のその首から上」
「な…、何を言っ!!!」

 言葉を最後まで述べる事も適わず、男の首から上が綺麗に切り離される。間近で、鋭利な刀で切り裂かれた首は、一拍置いて血を噴き出す。男の頭を両腕で抱きかかえて、シャワーのように血を浴びながら、少女は笑った。

「出てこないの? "黒い化け物"さん」

 少女の言葉に、空気が少しぶれて、つい、先ほどまでには闇しか見当たらなかった場所から、人の輪郭が現れた。真っ黒な女だった。髪も、目も、全身を覆い隠すような服も、全てが黒い。肩先まである髪を女は払い、切れ長の瞳を細め、おもしろそうに笑う。

「久しぶりだな。"白い悪魔"」
「お互い趣味の悪い通り名が付いたものね?」
「全くその通り。黒くて何が悪いんだ」

 ふん、と鼻を鳴らした女に、真白い少女はくすくすと…先ほどまでの笑顔とは違う笑い方で笑って、"オウジサマ"の顔を両手で高く掲げる。

「貴女の目的はこれ?」
「残念。違うんだな、これが。…今日はただの見学。あっちで馬車とその周りを守ってた忍が全滅してたからな。何事かと思って、さ」
「砂は、居ないと思ったのだけれど?」
「居なかったよ。砂は。これはただの好奇心さ。人より多少好奇心旺盛なものでね」
「相変わらずね、貴女は」
「そっちもな。相変わらず真っ白だ。今は赤いけどな」

 女の言葉に少女は笑って、頷いた。
 最初は真っ白だった少女の身体は、"オウジサマ"の血の濡れて、顔も、髪も、身体も、全て赤く染まっていた。

「今度は"赤い悪魔"と呼ばれるようになるのかな?」
「それはないな。お前のその暗部の癖に真っ白な格好は知れ渡っているからな。知っているか? お前の強さに惚れ込んでいる奴はな、お前の事を"雪の妖精"と呼ぶんだよ。真っ白で、穢れのない、木の葉に降り注ぐ暖かな雪のような少女、とな」

 目を2回、瞬かせて、少女は眉をしかめた。
 そういう表情を見るのも久しぶりだな、と女は思って、何とはなしに少女を見つめる。少女が今顔に浮かべているのは、明らかな侮蔑と、怒り。

「ば………っっかじゃないの!?」
「久しぶりにマジ怒りだな」
「本当だよ。こんなに腹立つの久しぶり。頭狂ってるんじゃないかしら、その馬鹿たち」
「まぁ馬鹿だからな」

 少女は、余程腹が立ったのか、周囲の木々に八つ当たりを始め、それを女は観賞する。実に楽しそうだ。木々を散々ぼろぼろにして、少女は据わった目で女を振り返る。女は自分の顔に浮かぶ笑顔をかき消して、少女を見下ろす。

「……ねぇテマリ、知ってる?」
「何を」
「雪はね、確かにとても綺麗で、純粋で穢れなんか知らないように見えるけどね…。だからこそ、容易く染まって、他の何よりも汚くなる物なんだよ?」
「…そうだな」
「絵の具はね、水に溶かすと、どんな色だって透明だよ。白以外は、ね。白は、濁るの。汚く、ね。他の色にほんの少し白を混ぜるだけで、不透明になる。汚く、汚く」

 積もり積もった雪の、踏み荒らされた様はどれだけ汚いものか。
 白は最初から濁っている。最初から透明でも純粋でもなんでもない。最初から汚れている。だからこそ、少女は白が好きなのだ。真っ白で、何者にも染まって、何者をも汚く染めるところが。

「ああもう腹が立って仕方ないったら」
「"白い悪魔"さん」
「何?」
「雪だ…」

 白い、白い、雪が、闇の中で浮かび上がって、"白い悪魔"と"黒い化け物"の上に降り注ぐ。少女の目が更に物騒になったのを見て取って、女は少し距離を取った。

「…ムカツク」

 少女がイライラと手を振って、自分の身体の周りに結界を張る。先ほど張った結界は既に消していたから。そうして忘れ去られた"オウジサマ"の頭を手に持って、大きく息を吐く。

「…テマリ、木の葉に来ない? 甘栗入り特大和風パフェ奢るから」
「…っっ! 行く行く! 勿論行くさ! ちょっと待ってろ? 今カンクロウのヤツに報告任せてくるから」
「"黒い雨"も来てたの」
「一応相棒だしな。こっちに興味惹かれたんで任せてきたけど」
「可哀想に」
「私の方が可哀想だ。今回の任務、完全にあいつの趣味。私はおまけだ」

 ただ単に、砂の暗部は二人一組が原則であるから、行きたくもないのにテマリは無理矢理に連れてこられた。"黒い雨"ことカンクロウの趣味…カラクリ人形収集は知っているから、少女は肩を竦めるにとどめる。
 テマリが物凄い勢いで去っていくのを見届け、少女…"白い悪魔"こと日向ヒナタは、空を見上げた。

 空からは白く冷たい雪が降り注ぐばかり。
 暗闇の中ですら、雪は真っ白でよく目立つ。
 
「雪は好きなんだけどね。けど、今はタイミング悪いよ。何かの嫌がらせ?」

 大きくため息をついた雪のような少女は、空いている方の手のひらで雪を捕まえて、笑った。




雪はとても綺麗だけど、それだけ染まりやすくて、汚いんだ…みたいなヒナタの台詞が書きたくて。
いつもは雪で白と言えば、純粋で、高潔で、綺麗で、穢れのない…そんなイメージで書くのだから、あえてその逆をしてみました。

後2日でこの企画も終了です。イラスト、小話、小説、どうぞ投稿くださいvv
投稿は何度でも構いませんのでv


 














>>千里様





「雪だわ・・・
今年は暖冬って言ってたけどやっぱり木の葉にも降るのね」

「ああ、だけどこの程度の気温ならすぐに雨に変わるな」


「ねえ、シカマル知ってる?雪って何からできてるのか・・。
白くて儚くてこんなに美しい。
・・・無垢なものを指すときにもよく使われる・・雪」

「・・・・なんだ皮肉か?そりゃ知ってるさ。
結晶化しようと元は雨と同じものだ。
雪の元なんて・・・・水蒸気と・・」

「・・・塵・・空気中に舞散る小さな小さなゴミ達よね」

「そうだな」

「・・・・フフ、嫌そうな顔しちゃって」

「お前がそんな風に言うからだろう。
俺たちゴミの舞い散る寒い中に突っ立ってるって訳かよ・・・。」

「・・・・・嫌な言い方するわね。まあ、その通りだけど。

でもね。私は雪の原理嫌いじゃないわ。
自然の力ってすごいといつも感心させられるから」


大気中の不純物を・・汚れを・・水で蓋って凍らせて
眼に見える形にして私達に見せ付ける


―――世界はこんなに汚れているんだ

――――私達はそんな世界に生きている

―――だけど自然は全てを浄化しようとする

――――忘れないで。自然の摂理をそして己の生きる世界を


全てをありのままに受け入れて伝えようとするそんな存在を
雪を見るといつも思い出す。


「・・・・・ヒナタは・・・リアリストなんだかロマンチストなんだか・・。」

「フフ」


「いい加減帰ろうぜ。」
「・・・そうね・・・見てたらきりが無いし・・・」

「・・・て言いつつ目線が動いてねぇ。」

「うん、ゴメン・・」


「・・・はあ・・めんどくせぇ・・

・・・・・どうせ、いつか俺たちも死ぬ。
そうすれば腐って塵になるか焼かれて灰になるか・・。
そのうち雪になって浄化される時もくるさ。」


「そうね。確かにそうかもね・・
・・・・その時は飽きるくらい雪を見ていられるかしら」

「その時は別に止めないぜ。
ヒナタが満足するまでいつまでも見てればいい。」



「・・・・・・・・・帰りましょうか。」

「・・やっと動く気になったか・・・・早く木の葉の里に帰ろうぜ。
・・・・・・きっとヤツラも遅いって文句言って待ってるにきまってる・・・」

「そうね・・・・みんな待ってるから早く帰ろう。」




空空さんこんばんわ!またまた滑り込みセーフで企画に参加させて頂きました〜

スレにとっての雪ってキライだったり好きだったり色々ネタは浮かびますが
今回は雪好きなスレヒナでお邪魔させて頂きました。
会話のお相手はなんとなくシカマルです。
こういう現実的な会話はシカかな〜とそして最後にナチュラルにほんわか纏めるのもシカしかないと(笑)

全体がほぼ真っ白って感じの大雪も好きですがちらちら降り出したばかりのこんな雪も好きです。
これがもしサイトUP作品だったらページ全体に雪降らせたい感じです(笑)
今回も水彩楽しく描かせて頂きました。
やはりヒナタの黒髪は闇や他の色と自然に溶け合うので水彩良いですねv

それでは(^^)

 



作品展示場。