たった独り。孤独。これ以上強いものはない。






    ぬぐい去るもの






 ルーキーナインのうちのくノ一。おしとやかな性格。名を日向ヒナタ。
 恐らくルーキーの中では下位の位置につく実力だろう。
 しかし、彼女は実は・・・・日向を守るために強くなっていたのだった。
 日向にはこんなしきたりがある。
 2人の後継者が生まれた場合、下の者を有力にさせ・・・上の者は弱くさせるというものが。
 つまりは、今のヒナタとハナビの関係がそうなのだ。
 しかし、実際の強さは圧倒的にヒナタが上である。
 ヒアシとヒザシの時は双子なのでしなかったが、次代であるヒナタとハナビの代はこれをやらないと、他国に狙われやすくなる。
 後継ぎの有力候補であるハナビは日向の屋敷にいるため、狙っても捕らえにくいが、日向は弱く下忍として働いているため、狙いやすい。
 そのため、多くの忍は真っ先にヒナタを狙うが、8班と強いヒナタの前には平伏すしかなかった。
 8班でも敵わない相手はひそかにヒナタが抹殺するということである。
 このやり方を実行するためには、多くのことをやる必要がある。
 まずはヒナタに多くの修行を課し、強くさせる。
 知識を学ばせ、力のない落ちこぼれを演じさせる。アカデミーに通わせ、下忍にさせる。
 ハナビを強く見せるため、表上ハナビに修行を課させる等々・・・・。
 このやり方を知っているのは、ヒナタ当人、ヒアシ、ヒナタの母、三代目火影だけである。
 他の宗家、分家の者は本当にヒナタが落ちこぼれと思っている。そのため、罵声は絶えない。
 日向を守るためならいいことかもしれないが、ヒナタ本人には辛いことだと母は思っている。
 母が辛くないかと問い掛けても、
「これが一族の掟でしょう?お母様。」
 と言って笑う。その時の悲しすぎる笑った顔は親としてはどうしても見たくないものだった。
「ヒアシ!まだヒナタに辛い思いをさせるつもりですか!?」
「・・・・・・・・・・」
「またそうやって黙り込んで・・・・子どもの幸せは願わないのですか!?」
「・・・・・・・・・・」
 毎日この喧嘩は絶えていない。





 8班のサバイバル。キバと赤丸は林の中を駆けていた。
 シノやヒナタも先生から逃げているのだろう。
 キバと赤丸は、あまりどこかに留まるということをしたくないのだが・・・・・と思っていたら茂みの中にヒナタがいるのが見えた。
 普通はサバイバル中に話し掛けたら紅先生に見つかる可能性があるため、話し掛けないが今日はなぜか放っとけなかった。
 すぐ傍に音を立てないようにそこに降りた。
 なぜか・・・ヒナタが泣いてるように見えてしまったからなのかもしれない。
「ヒナタ、どうした?」
「え?ううん、な、なんでもないよ・・・。」
「けど・・・辛そうだぜ?」
「くぅ〜ん。」
「赤丸も、そう思うってよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
 急に沈んだヒナタを見て聞いてはいけなかったか?と思った。
「ま、今はサバイバル中だから。でも・・・辛かったらオレに言えよ。相談ならのるから。」
「うん・・・・。」
 その言葉を聞いてキバと赤丸はすぐに移動する。振り返って見えるヒナタの背中は・・・・・やはり悲しそうだった。


 サバイバルが終わり、ヒナタは残って修行をすると、そう告げた。
 もちろん、修行もするが半分は一人でいたい理由もあったかもしれない。
 キバ達はすぐ帰るだろうと見越したが、
「オレ達も一緒に修行するぜ。ちょっと手合わせしてくれねぇか?」
「ワン!」
「オレも一緒にやろう。」
「げっ!」
「あら、いいチームになりそうな予感ねぇ。私も見てようかしら?」
「え・・・・・。」
「な?いいだろ?」
「う、うん・・・・。」
「よし!」
 そう言って構えをとるキバ。どうやら赤丸は出さないらしい。
 仕方ないと、思ってヒナタも構える。もちろん、白眼発動である。
 キバが動き、ヒナタに拳を繰り出す!ヒナタはそれを受け止め、柔拳で応戦する。
 キバはそれをかわし、一旦間合いを取ってクナイを投げる!
 ヒナタはザッと、横に移動しクナイをかわす。
 激しい攻防を繰り返すうち、キバを蹴り飛ばすことに成功する。
 数メートル飛ばされ、キバに隙が出来る。
 そこにつけこみ、一気に間合いを詰めようとした途端、後ろに気配が現れた!
「後ろががら空きだぜ、ヒナタ。」
「あ、赤丸・・・キャッ!」
 キバに変化した赤丸に背中を押され、バランスを崩して倒れこむ。
「俺は赤丸を出さないとは言ってねぇぜ。」
「そ、そんな・・・。」
「確かにキバの言うとおりだわ。ヒナタ、今日はあなたの負けよ。」
「は、はい・・・・。」そう言ってしゅんとなるヒナタ。もちろん、演技であることは言うまでもない。
 本当ならばヒナタが負けるわけがないのだ。
 しかし先程の手合わせ上、赤丸の気配に気付いてもヒナタは反応できないから負けるしかなかった。
「けど・・・もうちょっとだぜ、ヒナタ。」
「?」
「確かにそうだな。」
「え?」
「確かにそうね。」
「え?え?」
 次々に3人が同意するが、ヒナタだけは状況が全くわからない。
「だって・・・ヒナタはもっと強くなりたいんだろ?目標はまず目の前にいるオレ達じゃねぇか。」
「!!!」
 ―――どうしてなのだろうか?どうして彼らは私を信じているのだろう?
 落ちこぼれのはずなのに――!!
「気にすることはない、ヒナタ。人は皆、落ちこぼれと言う。天才というのが珍しいほどだ。」
 ―――心が温かくなる?励ましているのかな?
「これからもどんどん修行していくわよ、ヒナタ。今度はキバに負けては駄目よ。」
 紅の言葉に、次もオレが勝つからな!と、キバが言っていた。




 たった一言ずつで、私の気持ちが変わるわけではない。
 それでも、この気持ちがいつも私の背中を押すのはよく分かる。
 私は、必要とされているのかな?日向とは違う感じで。そうだったらとても嬉しい。
 日向に居場所があるか最近よく分からなくなっている。
 でも、唯一ある私のしっかりとした居場所。なくしたくないよ、絶対に。
 8班は、孤独をなくしてくれる場所。


    孤独を、ぬぐい去ってくれる場所だから。絶対になくしたくない。



                       完。




    あとがき
こんにちは、空空汐様。一和数です。遅くなってしまいましたが、小説、完成いたしました。
本当はCPにしようかと思ったのですが、考え付かなかったので友情ものにしました。
キバやシノ、紅は本当にヒナタのことは気付いてません。でも、本当に大事には思ってます。
私自身、8班友情ものはとても好きなので。
それでは、このような駄文ですが、どうぞ、スレヒナ同盟に使ってください。
もし、これでは駄目だという事ならば勝手に削除してください。


    『ぽたぽた』管理忍一和数