いつも暖かいものをくれる。私の心を癒してくれる。 そんな彼らが……私は好き。
ぬぐい去るもの
紅班のサバイバル演習。キバは赤丸と共に林の中を駆けていた。 正直に言ってしまえば、頭で考えて一撃なんて自分には合わない。姉とは違い自分は冷静な人間でない。 『ちゃんと考えて攻撃しなさい。』 この言葉に従わざるおえない。だって、自分たちはまだ下忍。先生の言葉はしっかり聞いておかなければ。けれど。 「……あいつだけは、違うんだろうな…。」 「くぅ〜ん?」 赤丸が心配そうに話し掛けてきた。いや、心配している。キバは一度、首をぶんぶん振る。 「なんでもねぇよ、赤丸。……よっしゃ!紅先生に一発喰らわせるための作戦練ろうぜ!!」 「ワンワン!」 そう赤丸に話しかけ、その場にザッと止まった瞬間。背後に気配が…。 「そんなにうるさい声上げたら、バレるでしょ?キバ。」 「く、紅…先生…。」
次の瞬間、シノとヒナタは誰かの叫び声を聞いた。その後に、犬の鳴き声も聞いた。
サバイバルが終わり、班が解散される。その中、ヒナタは残って修行をすると告げた。 「オレも残ろう。ヒナタ、修行に付き合おうか?」 「オレ達も一緒に修行するぜ。ヒナタ、ちょっと手合わせしてくれねぇか?」 「ワン!」 「い、いいよ…二人に悪いし。」 「そのようなことはない。なぜなら…それが、チームワークと言うものだ。」 「またその言葉かよ。」 キバが怪訝そうな顔をするのが見えた。何か変なことでも言ったのだろうか?オレは事実をいったまでだ。 「よし!まずはオレからだ。行くぜ、ヒナタ!!」 そう言ってキバは構えをとる。仕方ないと思っているのだろう。ヒナタも構えた。
しばらく攻防を繰り返す。そしてついに、ヒナタはキバを蹴り飛ばすことに成功する。数メートル飛ばされるが、そこは男。 「後ろががら空きだぜ、ヒナタ。」 「あ、赤丸…キャッ!」 キバに変化した赤丸に背中を押され、ヒナタはバランスを崩して倒れこむ。その間にキバはホルスターからクナイを取り出した。 「俺は赤丸を出さないとは言ってねぇぜ。」 「そ、そんな・・・。」 「確かに。キバは何も言っていない。今の勝負はヒナタの負けだ。」 ヒナタはしゅんとしているが、落ち込む暇は与えない方がいい。それではまた、自分を追い詰める。 「落ち込んでいる暇はないぜ、ヒナタ。」 「次はオレだ。」 「ワン!」 ヒナタはパッと顔を上げ、毅然に言い放つ。 「はい。よろしくお願いします。」
手を振った。まわりはもう真っ暗。二人にも家庭がある。私は手を振った。 「シノくんが鼻で笑ったって…気付いてるのかな?」 気付いてないね、きっと。キバくんも気付いているということも、気付いていない。 「あんなに分かりやすい監視って…そうそうないよね。」 今の私は冷たい私。三人しか知らない、本当の私。家の誰も知らない。父も母も、妹も従兄も。 「遅くなって悪かったわね、ヒナタ。行きましょうか?」 「はい。」 紅先生に付いて行く。今日は紅先生の家に泊めてもらう。…違うね。いつも泊まってる。
だから。だからね。 ぬぐい去ってほしいものがあるの。 それは、一族と自分の色。
完。
あとがき こんにちは、空空汐様。一和数改め綜柳です。
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